蔦屋重三郎の吉原細見の特徴は?大河ドラマ「べらぼう」の基礎知識

江戸時代

2025年の大河ドラマは江戸中期が舞台。

主人公は蔦谷重三郎(通称:蔦重)で、江戸時代の出版業者として知られています。

自身の手がけた「吉原細見」という吉原のガイドブックが大好評となったことをきっかけに

「江戸のメディア王」といわれるほどの人物となりました。

蔦重の「吉原細見」が何がすごかったのか結論を先に書くと、

2点の特徴があります。

蔦重版の「吉原細見」の特徴
  1. 情報が詳細で正確
  2. 安価で見やすい

この記事では、この特徴の詳細を解説します。

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「吉原細見」とは?

蔦重版「吉原細見」 早稲田大学図書館より 

そもそも「吉原細見」とは何でしょうか?

「吉原細見」とは、江戸幕府が唯一公認した「吉原」という遊郭での遊び方を記載したガイドブックでした。(出版は年2回)

吉原は遊女を買う男性客がメインです。

しかし現代のイメージとは違い、観光客や女性の見物者も多くいました。

女性は遊女たちの着物や髪型などおしゃれなファッションとして参考にしていたのです。

江戸時代の吉原は江戸最大の観光地であり、テーマパークのようなところで、ガイドブックは非常に大きな需要がありました。

歌川広重も名所として吉原を題材に絵をかいています。

(現代でも「るるぶ」や「まっぷる」がたくさん売れています。同じような感覚だったのでしょう。)

東都名所 新吉原 作:歌川広重
吉原細見の記載内容の概要
  • お店の名前と場所
  • 遊女の名前と揚げ代(価格)
  • 年中行事
     花見、ひな祭り、七夕など

次の章で蔦重の「吉原細見」の特徴について解説します。

蔦谷重三郎版の吉原細見の特徴

蔦重版の「吉原細見」の特徴は大きく2点あります。

蔦重版の「吉原細見」の特徴
  1. 情報が詳細で正確
  2. 安価で見やすい

特徴①情報が詳細で正確

蔦重は寛延3年(1750年)に吉原に生まれ、育ちました

他の出版社と異なり、地縁・血縁が濃い人物で、有力者の庇護を受けやすい人物だったと考えられます。

また、安永元年(1772)、

蔦重は、養父・蔦屋次郎兵衛の店の軒先を借りて、書店『耕書堂こうしょどう』を開店しました。

貸本屋かしほんやとして、遊郭への出入りも頻繁に行っており、

遊女とも仲良くでき、現場の生の声も聞くことができたのです。

ちなみに、江戸時代の遊女は読み書きができ、読書を楽しみにしていました。

遊女は年季が明けない限り、吉原から出ることができなかったたため、読書は数少ない娯楽の一つだったのです。

また、読み書きができたのは、客に手紙を書いて再度指名をもらうために必要な営業手段だったからです。

そのため、貸本屋という仕事をしていた蔦重は、通常知りえない吉原の情報を多く、且つ正確につかむことができました


貸本屋自分より背の高積んで商売した

廓〇費字尽(さとのばかむらむだじづくし)に描かれた蔦屋重三郎の店の様子 国立国会図書館蔵

特徴②安価で見やすい

蔦重版の細見と他の細見を比べると見た目に特徴があります。

各妓楼の記事に上下にらみ合いの形式を導入し、丁数を大幅に削減しました。

当時主流だった吉原細見(鱗形屋出版)の約半分の丁数です。

当時の細見価格は不明ですが、当然価格の引き下げにつながります。

また、非常にシンプルなつくりとなっています。

一見味気ないですが、その分とても見やすい構成となっています。


【蔦重版の吉原細見】
必要な情報に絞って出版されています。
遊女と妓楼のランク(名前の上のマークで表現)、遊女の揚代、年中行事の一覧、吉原の地図、妓楼ごとの遊女情報など見やすい構成になっています。

吉原細見 天保7(1836) 早稲田大学図書館蔵
吉原細見 寛政7 (1795) 国立国会図書館蔵
吉原細見 天保7(1836) 早稲田大学図書館蔵

蔦重版の吉原細見では、吉原の街を再現して、妓楼がどこにあるのか非常にわかりやすくなっています。

吉原は周囲を田んぼに囲われており、大門からしか入れません。

すなわち、順路が決まっているのです。

その順路に従って地図を記載し、全体像を記載しました。

吉原の配置図と比較するとその特徴が良くわかります。

また、吉原は7つの町から構成された街でしたが、町ごとに妓楼や遊女の情報を詳細に記載しています。

揚代や遊女のランクが一目でわかるように、合印(マーク)も記載しています。

「吉原細見」は当初は1枚刷りで出版されていましたが、横本から縦本へと冊子形式へと変化していきました。

そして、縦本へと変化させ、見やすさを定着させた人物が蔦屋重三郎でした。

1枚刷り:通油町四郎右衛門/版 元禄6年(1693)江戸東京博物館所蔵 横本:元文4年(1739)Wikipediaより 
縦本:蔦屋重三郎 寛政7(1797) 早稲田大学図書館所蔵

他の細見と比べ、絵が少なく必要な情報のみを正確に記載したのが蔦重版の「吉原細見」でした。

こうすることで、彫り手間、刷り手間、紙代、さらには絵師への支払いなどの経費削減を意味します。

さらには情報が一目でわかる読者にやさしい構成になっています。

この2点により、蔦重版が市場を独占することができ、もっとも有名な出版社となったのです。

↓吉原の各所の名称や妓楼のランクについては下記の動画で解説しています↓

↓遊女のランクについては下記の動画で解説しています↓

まとめ

以上、「吉原細見」について解説しました。

「吉原細見」とはその吉原での遊び方を記載したガイドブックでした。

この「吉原細見」は2025年の大河ドラマの主人公・蔦谷重三郎にとって飛躍のきっかけになる出版物でした。

蔦重版の特徴は以下2点です。

蔦重版の「吉原細見」の特徴
  1. 情報が詳細で正確
  2. 安価で見やすい

この情報を知っておくと、より大河ドラマ「べらぼう ~蔦重栄華乃夢噺~」が楽しめます。

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