吉原では元旦から大晦日まで多くのイベントが開催されました。
吉原を盛り上げることで客を呼び、ひきつける手段だったのです。
こうしたイベントを見物するため、男性客はもちろん、老若男女多くの人たちが吉原を訪れました。
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吉原の三大イベント
年中イベントが開催される吉原の中でも特に「春の夜桜」「玉菊灯籠」「俄」が三大イベントとしてあげられます。
吉原の三大イベント ~春の夜桜~

春の夜桜は、3月1日から桜の花が散る三月末まで開催されます。
これは寛保元年(1741)に始まったとされるイベントです。
3月1日になると、植木屋が開花直前の桜の木を運び込み、吉原のメインストリートである仲の町に植えました。
下草には山吹を添えて、周囲には青竹の垣根をめぐらし、中には雪洞を立てます。
桜の高さは引手茶屋の2階からの眺めを考慮して植えられました。
こちらの絵は引手茶屋の座敷から満開の桜や見物人を見下ろしている客の様子を描いています。
こうした上からの眺めは引手茶屋にあがった客の特権でもありました。
夜に雪洞の明かりに照らされた桜の下を悠然と進む花魁道中はいつにも増して妖艶であり、見物客はその美しさにため息が出るほどうっとりしたといいます。
そして、花が散った桜の木はすべて抜いて運び出されました。
期間限定の非常に豪勢なイベントです。
吉原の三大イベント ~玉菊灯籠~
7月には1日から月末まで仲の町の引手茶屋の軒に、趣向を凝らした様々な灯籠を吊るしました。
これが三大イベントの二つ目である「玉菊灯籠」です。
玉菊とは角町の中万字屋の遊女で、才色兼備でどのような芸にも通じ、とくに河東節の名手だったといいます。

享保11年(1726)、25歳という若さでこの世を去りますが、人柄が良く、多くの人に愛されていました。
そこで、引手茶屋の有志が、その年の盆に灯籠を飾り、玉菊の霊を弔いました。これが、玉菊灯籠の始まりだと言われています。
下の絵は玉菊灯籠の準備をしている光景です。引手茶屋の軒先に、妓楼で働く男の奉公人である若い者が灯籠をつるしている様子が描かれています。

吉原の三大イベント ~俄~

8月1日になると、三大イベントの最後、「俄」が始まります。
俄とは吉原で行われる特有のコスプレパレードのことです。
蔦屋重三郎が活躍した、安永から天明のころに、芝居好きの引手茶屋の主人や妓楼の楼主たちが集まり、俄狂言といって、即興劇を作り、仲の町を練り歩いたことが俄の始まりとされています。
素人が急に行う様子から「俄」と呼ばれました。
これが非常にうけ、芸者やそれを助ける幇間が中心となって、思い思いの方法や恰好で行進することが恒例となったのです。
そして、茶屋や妓楼の人々も参加して踊りや芝居をしながら、鳴り物を鳴らして盛大に歩き回りました。
また、車の付いた舞台を引いて、歌舞伎の名場面などを演じることもありました。
俄は晴天30日間実施され、見物客が絶えず吉原を訪れ、非常に盛り上がったと言います。
吉原の年中行事
春の夜桜、玉菊灯籠、俄の他にはどのようなイベントがあったのか、順にみていきます。
元日、この日は大門を閉じて、全ての妓楼が休業しました。各妓楼では大広間に楼主以下全員が勢ぞろいし、雑煮で新年を祝います。
1月2日には営業開始となります。妓楼には大黒舞や大神楽がきてにぎわいます。


そして、遊女は引手茶屋などに出向いて年始の挨拶をします。禿もおそろいの衣装で羽子板をもって、供をしました。

1月7日は、七草粥が振舞われました。
2月の初午の日、江戸市中と同じく、吉原でも稲荷社の祭りが行われ、豊作や商売繁盛を祈りました。
吉原では各妓楼で遊女の名前を書いた提灯を軒下につるし、赤飯・油揚げなどを供えます。
とくに九朗助稲荷の縁日には遊女や禿をはじめ吉原の住人が多数つめかけました。

3月1日には吉原三大イベントの一つ、春の夜桜が始まります。
3月3日はひな祭りがあり、部屋にひな人形を飾る遊女もいたと言います。
4月1日は衣替えで、遊女は綿入れから袷に変わります。
4月9日 卯の花を軒に挿しました。
4月下旬には仲の町に花しょうぶが植えられました。
5月5日、端午の節句で衣替えで袷から単衣に変わります。
5月中旬、引手茶屋で正月の年玉用の甘露梅作りが始まります。
7月には三大イベントの一つ、玉菊灯籠が月末まで行われます。
7月7日、七夕。
7月12日には早朝から仲の町で草市が立って、お盆用品が売られました。
7月13日は、吉原が一斉に休業となります。元日以来、半年ぶりの休みとなります。
8月1日は、徳川家康が江戸に入府した日です。
江戸城では、それを祝して、大名諸侯が白帷子で将軍に謁見します。将軍も同じく、白帷子で迎えます。それを真似て、吉原でもこの日に花魁道中をする遊女は、白無垢をきました。

また、三大イベントの一つ俄が始まります。
8月14~16日は月見。
9月9日、この日から遊女たちは冬の衣装に衣替えします。
10月、冬を迎えて、大火鉢が用意されます。
11月8日、ふいご祭りで、火除けのまじないとして、妓楼の中庭にミカンを投げ、禿に拾わせました。
11月17~18日、水道尻の秋葉権現の祭礼が行われます。
12月13日、妓楼ではすす掃きが行われ、遊女は定紋入りの手ぬぐいを奉公人に配りました。
12月20日、妓楼で餅つきが行われます。

12月25日、松飾を立てます。
大晦日、妓楼に狐舞が押しかけてきました。この狐に抱きつかれた人は、その年に妊娠するという言い伝えのため、狐の面をかぶった男が座敷に出現すると遊女や禿は逃げ回りました。

まとめ
以上、吉原で行われたイベントを紹介しました。
三大イベントと言われた春の夜桜、玉菊燈籠、俄をはじめ、
吉原を盛り上げるために多くのイベントが開催されました。
男性客だけでなく、老若男女の見物人がつめかけました。吉原の遊女たちにとっては、良い息抜きになったのではないでしょうか。
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